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【オススメの野球本】甲子園のセンバツ(大阪桐蔭優勝)が終わって、プロ野球が開幕して、タイミング的に野球の話。


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こんばんは。

 

昨日はセンバツの決勝で、履正社 vs 大阪桐蔭の大阪代表同士の一戦が行われ、一昨日からプロ野球も開幕しました。

 

というわけで、今日は野球に関する本の紹介です。

最初の2冊は数ヶ月前に一色文庫さん(大阪・上本町にある古書店)で100円で購入した本で、いずれも絶版本で書評的なことを書くニーズがあるのかなと思ったりもするのですが、ひとまず書いてみます。

 球児たちよ 永遠に–PL学園野球 その強さの秘密

球児たちよ 永遠(トワ)に―PL学園野球 その強さの秘密

球児たちよ 永遠(トワ)に―PL学園野球 その強さの秘密

 

 著者は高校野球の名実況でおなじみの植草貞夫

反射的に「おなじみの」と書きましたが、調べてみると甲子園での最後の実況は1998年で、若い人はご存知ないかもしれないですね。

競馬でいうところの杉本清みたいなもんですが、杉本清さんも知らんですよね。

 

 この書籍が出たのが1984年。

この時点でPL学園は春夏あわせて4回の全国制覇を果たしており、「逆転のPL」として甲子園でも名の通った存在となっていました。

 

そして、この書籍が執筆されていた1983年は桑田、清原のKKコンビが入学した年でもあり、彼らの活躍もあって夏の大会で優勝しています。

この本が書かれた経緯も、タイトルにあるように、「PL学園の強さの秘密」に迫ろうというのが企画の発端となっています。

 

それと、本書を読んで知ったのですが、植草貞夫の長男がPL学園の野球部に所属していたようで(のちにジャイアンツで活躍した吉村禎章と同学年のようです)、そういった背景も本書執筆の動機のひとつとなっているようです。

 

2章のタイトルが「83年夏ー池田からPLへ」で、まさに上で書いたKKコンビが活躍した1983年の夏の大会のことが記されています。

 

「池田」とは、前年の夏とこの年の春に優勝し、史上4校目の「夏・春連続制覇」をなしとげた徳島・池田高校。

攻めダルマの異名をとった名将・蔦監督のもと、この年の夏もエースで四番の水野雄仁(のちの巨人)を中心に優勝候補に挙げられ、夏・春・夏の三連覇が達成されるか注目を集めていました。

 

ちなみに、この池田高校は前年、甲子園のアイドルだった早稲田実業荒木大輔(水野の一学年上)をボコボコにして、戦前の予想をくつがえして14対2と圧勝します。

(この試合も植草貞夫が実況氏、「荒木大輔、鼻つまむ」の有名なフレーズが生まれています)

 

迎えた83年夏の準決勝、PL池田。

このときは早実ー池田のときと違って、池田が優勝候補として圧倒的な注目を集めていましたが、まさに前年の早実ー池田のときがそうであったように、戦前の予想をくつがえし、PL打線が水野をボコボコにします。

 

本書にも引用されていますが、この試合で1年生の桑田が水野からホームランを打った際に「背番号1の水野が背番号11の桑田に打たれました」のフレーズが生まれています。

さらに、続くバッターも連続ホームランを打ち、これまた有名な「いつも自分のやっていることを相手にやられてしまいました」という実況が飛び出します。

 

Youtubuにあったんで、貼っておきます。 


【甲子園】PL学園-池田36連勝でストップ「あの水野がボコボコに」

 

結果、試合は7対0でPLが圧勝します。

同章ではこのPL池田の試合を中心に、この年の夏のPLの試合を詳しく解説。

選手のアンケートなども引用されるのをはじめ、試合の経過だけではなく、これまでの過程や前後の状況などもフォローしているので、高校野球好きの人は楽しめるんじゃないでしょうか。

 

ちなみに、桑田、清原は当たり前のように1年生のときから活躍していた印象がありますが、はやり1年生をレギュラーで使うのは当初ちょっとした壁があったようで、この本を読んで初めて知りました。

(といっても、大きなトラブルもなく実現したみたいですが)

 

それ以外では、植草貞夫による中村監督へのインタビュー、父兄やプロ野球で活躍するOBなどに触れられています。

 

本書による強さの秘密を端的にまとめると、全寮制で平等に練習をする、神に祈る全員野球 ということになると思います。

簡単にまとめすぎた嫌いもありますが、思いのほか文章が長くなったのでゆるしてください。

 

ちょうどこの本を読んだのは去年の夏くらいだったと思いますが、その少し前、PL学園野球部 が2016年の夏の大会を最後に自動休部となっていました。

くしくも、昨日大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた春のセンバツは史上初の大阪代表校同士の決勝戦になりましたが、その対戦がきまった同じ日に、PL学園高野連脱退が受理されたニュースが報道され、なんだか感慨深いものを感じさせられました。

 

ちなみに、今日の決勝戦大阪桐蔭の1番バッター藤原くんが先頭打者ホームランを放ちました。

勝戦の先頭打者ホームランは35年ぶりで、それを打ったのがPL学園の佐藤公宏選手だそうで、大阪vs大阪の試合でまたPLの名前が出てくるのがなんかすごいというか、PLの亡霊現るって感じで、なんかいろんな意味ですげーと思いました。

 

それだけ甲子園の歴史をつくってきた証左でもあるわけで、だからこそ余計にさびしくもありみたいな。

この本を読む限り、まさかこんな日が来るなんてって感じですが、まさに人の世の栄枯盛衰を感じます。

 

 広岡野球の戦略―壁を突き破るニューリーダーの条件 

広岡野球の戦略―壁を突き破るニューリーダーの条件 (Mypal books)
 

 植草貞夫の本でだいぶ尺とったんで、ここは手短にいきましょう。

 

近年では(といっても、もうけっこうたちますが)ID野球をかかげて、それまで弱小だったヤクルトを優勝の常連チームに変えたノムさんこと野村克也監督が有名ですが、それ以前の名監督といえば、広岡達郎の名前が挙がるのではないでしょうか。

 

1978年、ダメ球団だったヤクルトスワローズを優勝に導き、その手腕を西武グループの総帥・堤義明に買われて1982年に西武ライオンズの監督に就任。

当時の西武は「十二球団一の怠け者集団」といわれていたくらい放任主義のチームカラーで、「管理野球」の代名詞のような広岡が監督に就任してもチーム内で衝突が起こり、空中分解するとマスコミなども予想していました。

 

一方の広岡は「1年で優勝してみせる」と公言し、その言葉通り82年のシーズンにライオンズを優勝に導き、その後の常勝・西武ライオンズの基礎を築きます。

 

本書が出版されたのが82年12月で、快進撃を続けたこの年の西武が、広岡によってどのように組織化され、チームとして強くなったのかを分析しています。

 

広岡監督はディフェンスを重視し、「広岡式海軍野球」とわれる(呉出身で、父親が海軍の軍人だったらしいです)徹底した管理野球を実践します。

このイメージから、選手たちを規律、規律で統制しているイメージでしたが、本書を読んで少し印象が変わりました。

 

栄養バランスを考えた食事の徹底から、人身掌握をする選手起用にいたるまで、すべてが論理的で、筋が通っています。

また自分にも厳しく、堤義明に厚遇で迎え入れられた際にも、「私の都合により、退団する時は、年俸はそこでカット、受領済みの契約金も返還す」「休養中は給料は支払わない」など、自身にとっても非常に厳しい契約書を作成してもらい、それを自らに課しています。

一方で、「優勝したら裏方をはじめ、みんなの給料を上げてほしい」と球団代表にかけあうなどの行動にも出ています(口約束だけで、これは守られなかった)。

 

本書にも出てきますが、堤義明の信頼も絶大で、それに応えるかのように自身が正しいと思うチーム作りを実践し、リーグ制覇、日本一という結果も残します。

西武との契約は異例の5年契約で、1年目での日本一、堤義明との蜜月関係を考えると、本書を読んでる限り西武はますます強くなっていきそうです。

 

本書の終章のタイトルは「日本のプロ野球を広岡が変える」ですが、実際に翌年の1983年も優勝、日本シリーズで巨人を破り、2年連続の日本一。

以降、85~88、90~94年と80年代後半から90年代初頭はほぼ毎年優勝していますが、広岡自身は85年契約を1年残して電撃辞任をしています。

 

同様に95年にロッテの重光オーナーに請われてGM(ゼネラルマネージャー)に就任し、一定の成果を出しますが、やはり揉めて退団。

いずれも、球団側に問題のある行動がゼロではなかったりもしますが、こうも毎回毎回もめてやめているところを見ると、広岡にも何かあるのではないかと勘ぐってしまいます。

 

しかし、体調管理やチーム編成など、かなり先見的な取り組みを当時からやっており、チームをまとめる野球人としての手腕はすごいと思います。

その一端を本書で知ることができました。

 

あと、植草貞夫の本もそうですが、当時のタイムリーな話題を取り上げた書籍を今の時点から読み返してみるのも古書を読む楽しみのひとつですね。

 その他の野球本

 取り急ぎ、家の本棚で目についた野球関連の本をピックアップしてみます。

 落合博満 変人の研究 ねじめ正一

落合博満 変人の研究

落合博満 変人の研究

 

「変人」と呼ばれる落合という人物の姿を、ねじめ正一江夏豊豊田泰光赤瀬川原平なんかにインタビューしていきながら解き明かそうとする本書。

後半は、当時中日の監督をしていた落合の監督としての姿に迫ります。

 

 打撃の神髄 榎本喜八伝 松井浩

打撃の神髄 榎本喜八伝 (講談社+α文庫)

打撃の神髄 榎本喜八伝 (講談社+α文庫)

 

天才と呼ばれ、イチローよりも早く1000安打を達成した伝説の打者、榎本喜八

「神の域へ行かせていただきました」という“合気打法”の真相に迫る一冊です。

(個人的には、読んでみてイチローよりも前田智徳が思い浮かびあがりました)

 

2005年に出版された単行本をもっていますが、昨年文庫で復刊したみたいですね。

 

 アンダースロー論 渡辺俊介

アンダースロー論 (光文社新書)

アンダースロー論 (光文社新書)

 

 タイトル通り、渡辺俊介によるアンダースロー論。

確か、プロ野球やめたあと社会人に行ったけど、いまどうなってるんやろう?

 

 133キロ怪速球 山本昌

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

 

 40代を超えても現役を続けた山本昌が、自ら野球人生を振り返るとともに、自身の強みを分析します(趣味のラジコンも投球に活かされているとか)。

 

 あぁ、監督 ――名将、奇将、珍将  野村克也

あぁ、監督    ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)

あぁ、監督 ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)

 

 野村監督による監督論。

基本、ノムさんの本はおもしろいけど、似たような話がどの本でも出てきたりする^^;

あと何冊か家に野村監督の本があったと思うけど、ひとまず割愛。

 

 プロ野球「衝撃の昭和史」 二宮清純

プロ野球「衝撃の昭和史」 (文春新書)

プロ野球「衝撃の昭和史」 (文春新書)

 

今まで挙げてきた本は、中には普通くらいのもあるけど基本的にどれも面白かったのですが、この本は 大して面白くなかった。

 

野球ファンなら一度は聞いたことあるような話が取り上げられているけど、そんなびびるほどの新発見は書かれていなかったような気がします。

 

というか、いろいろ調べたんでしょうけど、なんか学生のレポートを読まされているような感じで、筆者独自の視点みたいなものが感じられませんでした。

てか、今amazonのレビュー見たらみんな高得点だった・・・。時間があれば再読して確かめてみようかなと思ったけど、やっぱ文章に魅力がなかったように思います。

 

本屋さんと野球

詳しい情報はしらないけど、本屋さんでも野球好きの人はいるはずで(双子のライオン堂の竹田さんは中日ファンっておっしゃってました。さるやみ堂の方は広島ファンだったはず)、そういった普段なかなか表に出てこないお話を、「読読 よんどく?」のサイトのコラムで書いたりしてもらえたらなとかちょっと思ったりしてるんですけど、ユーザーの人も楽しめるんじゃないかなって。

 

yondoku.jp

 

本屋さんのオーナーやスタッフの方が、本や本屋さんのことについて書かれているのはよく目にしますが、そうじゃなくて、野球に限らなくてプロレスでも近所のおいしいお店の話でもなんでもいいんですけど、そんな話題を提供することで、「あの人⚪️⚪️好きだったんだ!」みたいな感じで読んだ人が興味をもって、それがお店を訪れる動機のひとつになったりもするんじゃないかなとか思ったんですけど、どうでしょうか。

 

近所のお店や通学、通勤の途上にあるお店以外で、わざわざその本屋さんに行くのはだいたい本好き、本屋さん好きの人が多いと思いますが、そうじゃない人たちにいかにアプローチしていくかってことを常々考えているんですけど、上記の方法は比較的簡単にできることのひとつじゃないかな、なんてことを思います。

(たとえば、プロレス関連のキーワードでググった人が、本屋さんが書いているプロレスに関する記事を読んで、ここの本屋さん面白そう!って足を運ぶみたいな)

 

ちなみに、本屋さんと野球のイベントはさすがになかなかありませんが、ちょっと前にアオツキ書房(大阪・北堀江)で下記のようなイベントがありました。

nice-choice.net

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